シェアコミュニケーション
チョコレートで幸福度があがる?
他のお菓子4種と比較調査
2024.01.30
チョコレートを食べるとちょっと気分があがったり、ちょっと癒やされたりしませんか?チョコレートの成分には、気持ちをゆったりさせたり、高揚感や楽しさを感じさせたりする効果があるという科学的研究もあるようです。
今回は、チョコレートが幸せにどのように影響するのか、どのように食べると幸福度が上がる可能性があるのかを確かめるために、
「チョコレート」「米菓」「キャンディ」「ビスケット・クッキー」「ポテトチップス」のいずれかを普段週1回以上食べる全国の20~60代の男女2000名に「チョコレートの喫食と幸福度に関する調査」を行いました。
今回の調査では、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司氏が提唱する、幸福度(ウェルビーイング)を向上させる「幸せの4つの因子」※1のうち、「ありがとう因子」「なんとかなる因子」を参考に聞いています。また、チョコレートについて測るため、富士経済の2022年市場規模のトップ5※2である「チョコレート」「米菓」「キャンディ」「ビスケット・クッキー」「ポテトチップス」の5ジャンルを採用し、各ジャンルを喫食する人の幸福度を比較して検証しています。
※1:「幸せの4つの因子」とは、前野隆司氏が提唱する、以下の因子で構成される幸福度を向上させるための考え方のこと。
①やってみよう因子 ②なんとかなる因子 ③ありのままに因子 ④ありがとう因子
※2:参考 2022年 食品マーケティング便覧 No.1、富士経済グループ、 https://www.fuji-keizai.co.jp/report/detail.html?code=162107801&la=ja(参照 2023-9-1)
調査概要
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調査名
チョコレートの喫食と幸福度に関する調査
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日時
2023年9月15日〜2023年9月20日
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調査対象
全国の20代~60代男女
(かつ、「チョコレート」「米菓」「キャンディ」「ビスケット・クッキー」「ポテトチップス」のいずれかを普段、週1回以上喫食している方) -
調査人数
2000人
(「チョコレート」「米菓」「キャンディ」「ビスケット・クッキー」「ポテトチップス」で各400人ずつ) -
調査手法
インターネット調査
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調査会社
ネオマーケティング
調査結果
TOPIC1:
チョコレートと幸福因子の関係性
TOPIC1では、チョコレート以外のお菓子と比較し、チョコレートがもたらす可能性のある幸福要素を調査しました。
※比較対象について、下記のように定義。
- 「チョコレート喫食者」=最も喫食頻度の高いお菓子がチョコレートの人
- 「チョコレート以外のお菓子喫食者」=最も喫食頻度の高いお菓子がチョコレート以外(米菓、キャンディ、ビスケット・クッキー、ポテトチップスのいずれか)の人
「他者とのコミュニケーション時の幸福度向上」と「前向きな気持ちの向上」に
つながる可能性が明らかに
チョコレート喫食者の約2人に1人は「シェアしたり渡すことで、一緒に楽しくなれる」(45.5%)、 「もらうと相手への好感度が上がる」(49.5%)、4割近くが「シェアしたり渡すことで、感謝や好意を伝えられる」(41.3%)と回答し、チョコレート以外のお菓子喫食者と比べても高いスコアに。チョコレートが他者に渡したりもらったりする場面で幸福度向上に寄与している可能性が明らかになりました。
また、チョコレートを「食べることで、もう少しだけ頑張ろうという気持ちになれる」(52.0%)、「食べると不安や緊張がほぐれる」(47.5%)、「持っていると気分が上がる」(44.5%)など、チョコレートは食べるだけでなく存在自体が前向きな気持ちに寄与する可能性があると考えられます。
喫食時に得られる短期的な幸福感が大きいことが明らかに
チョコレート喫食者の64%が「食べると幸せを感じる」と回答し、チョコレート以外のお菓子喫食者の平均よりも高いスコアに。喫食した時に短期的に得られる幸福感は、チョコレートが最も大きい結果になりました。
TOPIC2:
幸福度に寄与する可能性のある
チョコレートの喫食方法
チョコレート喫食者のうち、幸福度※が全体平均よりも高い人(=チョコレートが高い幸福度に寄与していると考えられる人)がどのようにチョコレートを喫食しているのかを調査しました。その結果、下記シチュエーションでチョコレートを喫食することが、幸福度につながりやすい可能性があることがわかりました。
※幸福度の定義および高低の基準について
・・・チョコレート喫食者(400名)に対し、イリノイ大学名誉教授 エド・ディーナー博士が開発した「人生満足度尺度」(5問)と、今幸福を実感しているかを聞く設問(1問)の合計6問を、「とてもそう思う」(7点)「そう思う」(6点)「どちらかというとそう思う」(5点)「どちらでもない」(4点)「どちらかというとそう思わない」(3点)「そう思わない」(2点)「全くそう思わない」(1点)の7つの尺度で回答してもらい、点数の総和として「幸福度」を定義。全体平均の22.8ptを基準に、幸福度の高い人・低い人を分類。
- 喫食頻度:
頻度が多い傾向
- 喫食時間帯:
朝の起床後から喫食する傾向
- 喫食シーン:
仕事・勉強・家事の合間に喫食。
また、複数人でシェアする傾向に。 - 喫食時の心情:
「幸せな気分の時」「楽しい気分の時」
「癒されたい時」に喫食する
専門家からのコメント
慶應義塾大学大学院
システムデザイン・マネジメント研究科 教授
前野 隆司 氏
(まえの たかし)
近年、身体的、精神的、社会的に良好な状態を表す「ウェルビーイング(well-being)」という概念が注目を集めています。私たちの研究によると、人の幸せには、「幸せの4つの因子」(「やってみよう」因子、「ありがとう」因子、「なんとかなる」因子、「ありのままに」因子)が寄与していることがわかっています。この度、ロッテとの共同研究の結果、チョコレートは他のお菓子に比べて喫食により得られる短期的な幸福感(気分が上がる、一緒に楽しくなれる)が高い傾向があることがわかりました。また、チョコレートは、幸福につながる因子に含まれる以下の要素が他のお菓子以上に寄与している傾向が見られました。
①他者とのコミュニケーション(シェア・渡す)時の幸福度向上
②前向きな気持ちの向上
したがって、他者とのコミュニケーションを円滑にしたい時や、気分を前向きに切り替えたい時に、適切かつ継続的にチョコレートを喫食することは、長期的なウェルビーイングに寄与する可能性があると考えられます。食が幸福度に寄与する可能性を示した本研究結果は、今後、わたしたち人類が食の豊かさや幸せな人生を追求していくための貴重な一歩であるといえるでしょう。
帝塚山学院大学 人間科学部 心理学科 講師
中村 早希 氏
(なかむら さき)
誰かと一緒にお菓子を食べることは人間関係にポジティブな影響をもたらします。たとえば、私たちの研究では、お菓子を食べながら話し合うほうが笑顔の表出が増え、話し合いの内容に対する満足度が高くなることが分かっています(中村・三浦, 2014)。他にも、甘いお菓子を食べた時のほうが他者を好ましく評価すること(Schaefer et al., 2020)や、他者を助ける意図が高まる(Meier et al., 2012)ことが報告されています。
今回の調査において「シェアしたり渡したりすることで、一緒に楽しくなれる」「もらうと相手への好感度が上がる」という得点がチョコレートで最も高くなっていたことは、チョコレートは他のお菓子と比べても、子供のおやつから高級品まで様々なものがあり、食べる相手や場の雰囲気に合わせて選ぶことができることが影響していると考えられます。
Gray(2012)では、同じチョコレートを食べた場合でも、気持ちが込められていると感じることで美味しさや甘さの評価が高くなることが示されています。一緒に食べる相手のことを思って選ぶことで、ポジティブな心理効果をより発揮することができるかもしれません。
出典
中村早希・三浦麻子 (2014). 飲食行動が話し合いにおけるコミュニケーション行動・主観的評価に及ぼす影響 ――菓子を食べると話し合いはうまくいくのか?――人文論究, 62(2), 59-77.
Schaefer, M.; Reinhardt, A.; Garbow, E.; Dressler, D. Sweet taste experience improves prosocial intentions and attractiveness
ratings. Psychol. Res. 2020, 85, 1724–1731.
Meier, B. P., Moeller, S. K., Riemer-Peltz, M., & Robinson, M. D. (2012). Sweet taste preferences and experiences predict prosocial inferences, personalities, and behaviors. Journal of Personality and Social Psychology, 102(1), 163–174.
Gray, K. (2012). The power of good intentions: Perceived benevolence soothes pain, increases pleasure, and improves taste.
Social Psychological and Personality Science, 3(5), 639-645.