シャアザクライストって何者?!
誕生!「機動戦士ガンダムマンチョコ」
シール入りチョコレート菓子「ビックリマンチョコ」シリーズから、「機動戦士ガンダム」とのコラボレーション商品「機動戦士ガンダムマンチョコ」が登場し、話題を集めています。おなじみのコレクターシールでコラボが実現し、ビックリマンのイラストレーターが人気キャラクターを描き下ろしました。両雄のコラボは意外にも初めて! なぜ今、コラボが実現したのか? ビックリマンの企画を担当するロッテの本原正明、ガンダムのコンテンツ企画に携わる創通の山下さん、サンライズの久下さんが誕生までのエピソードを語り合います。
コラボのタイミングを見計らっていた?!
本原 本日はお集まりいただき、ありがとうございます。まずは私から、今回のコラボレーションの背景を簡単にお話ししたいと思います。「ビックリマン」では発売時から大事にしているコンセプト「人をびっくりさせる、ドッキリさせる」にもとづき、2013年ごろからファンの裾野を拡大しようと、さまざまなコラボ企画に取り組んでいます。そのため、世間を驚かせる、話題になりそうなコラボができないか――日頃から思いを巡らせているんです。
山下 そうだったんですね。ビックリマンが面白いコラボをされていることは当然知っていて、コラボ相手のことを常々、「うらやましいな」と思っていました(笑)。
本原 企画する際、重要視しているのはタイミングです。ご一緒するお相手も、ビックリマンやコラボの企画に魅力を感じてくださることが大事だからです。私は普段から、数年先を見据え、さまざまなコンテンツの周年、世の中のビッグイベントにはアンテナを張っています。それで、2019年の大きな話題は何だろう――。注目したのが「ガンダム」でした。
山下 ありがとうございます。2019年はテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の放映40周年。さらに2020年は、ガンダム人気の火付け役となったプラモデル「ガンプラ」発売40周年が続きます。ガンダムの制作に携わる各社の中では、この2年間を「機動戦士ガンダム40周年プロジェクト」として、盛り上げていこうと考えていました。
本原 そういうお話を以前からつかんでいました(笑)。今しかない!とお声掛けさせていただいたんですよ。私たちにとってもガンダムは、心強い存在です。なぜならビックリマンがヒットするのは、1985年から始まる「悪魔VS天使」シリーズがきっかけです。子どもの頃に熱中していた現在の30~40代の方の中には、最近はビックリマンから遠ざかっていらっしゃる方も多いので、そんな皆さんにぜひもう一度手に取ってもらえるよう、興味をひくコンテンツとタッグを組んで仕掛けていきたいな、と考えていました。
山下 本原さんからお話をいただいた時――1年半くらい前ですが、まさに一連の40周年企画を考えている最中でした。これまでのガンダムファンはもちろん、もっと多くの人に興味を持ってほしい、好きになってほしい、という願いがありました。ただ、それに対して大きな課題を持っていまして、ガンダムを知る機会って、アニメ・ガンプラ・ゲームを通じて、というケースがほとんどなんです。要は、興味を持って探しに行かないとなかなか目に触れる機会がない。そんな中、「ビックリマンチョコ」とのコラボとなれば、スーパーやコンビニで目にする機会が増え、幅広い方に手に取ってもらえます。お客様との接点が増えることは、私たちにも大きなメリットでした。
本原 山下さんとお会いして、すぐに企画の打ち合わせが始まりました。私は商品を2パターンの構成として、東日本、西日本で発売時期を入れ替えながら、シリーズ展開したいと検討していました。では、その2パターンとする場合、どのようにキャラを選んでいけばいいのだろう? その時に、山下さんのアイデアは欠かせませんでした。
山下 最終的に、テレビアニメ第1作「機動戦士ガンダム」のキャラクターの中から、主人公のアムロ・レイが所属する「地球連邦軍」と、敵対するシャア・アズナブル、ザビ家を擁する「ジオン公国軍」の2パターンに決まりました。私からいくつか案は出しましたが、結局は最初にお話ししたこの案にすんなり落ち着きましたね(笑)。テレビシリーズ放送40周年にフォーカスするなら、最も素直な分け方ですし。
本原 ビックリマンも天使と悪魔の対立構造で展開しているので、主人公側と敵対勢力に分けたのは、私もいいなと思いましたよ(笑)。
ガンダムはキャラのコラボをめったにしない?!
本原 両軍でそれぞれ24枚(計48枚)のコレクターシールのラインアップを一緒に企画しましたが、山下さんがこだわったキャラ選定のポイントはどこですか?
山下 主役級は外せませんが、両軍ともストーリーの中で重要なキャラ、モビルスーツ(人型ロボット)、モビルアーマー(大型ロボット)など、バランスよく選んでいます。ファンの方は想像がついたかもしれませんが、ジオン公国軍のほうは登場するモビルスーツ/モビルアーマーが多いので、選定が大変でした。社内でも「あれも入れたい!」「これも入れたい!」と議論になりましたが、最終的には24枚にうまく収められたのではないかと思います。
久下 本原さん、山下さんが企画を固めたあと、1年ほど前――昨年の秋ごろから、サンライズの監修が入り、私はそこから参加しました。ラインアップを見て、メインどころを押さえた良い構成だと思いました。個人的には、ジオン公国軍側に「トリプル・ドム」が入っているので、その3体の「ドム」を操縦するガイア、オルテガ、マッシュの3人は入れてほしかったなあ(笑)。でも、センスを感じるのは、ミハル・ラトキエ。アニメでは数話にしか登場しませんが、重要な役どころで、メインキャラクターに並ぶくらい人気があります。ただ、今回のように網羅的なラインアップでは、外れてしまうことも多いんです(笑)。ミハルが入っているところに、ガンダム愛を感じますね。
本原 山下さんが上手に選んでくださいました。私も主役級だけでなく、意外なキャラを盛り込みたいと思っていました。そんな遊び心が、開封する楽しさにつながるからです。そして今回、ビックリマンとガンダム双方のキャラによるコラボも実現して、「スーパーアムロゼウス」「ヘッドガンダムロココ」「ブラックシャアゼウス」「シャアザクライスト」が誕生しました!
山下 提案の時から「ぜひやりたい!」と私からも伝えていました。キャラ同士のクロスオーバーがなければ、コラボの意義が出てきませんので。ちなみにガンダムは、他のキャラと組み合わせることはめったにやらないんですよ。
久下 そうですね。40周年記念の企画だったことがポイントです。通常、ガンダムの世界観に照らし合わせて、デザインなどに関してルールを設けているので、その枠から外れることをあまりしていません。ところが40周年記念の企画では、その枠組みを外してチャレンジしていくのもある程度許容していこうという方針でした。だから、キャラ同士のコラボも実現した。ビックリマンという確立されたキャラとのコラボですから、期待感が高まりました。
本原 シールの世界でしか実現できない、唯一無二のキャラが生まれました。「ヘッドガンダムロココ」は、人物のキャラ「ヘッドロココ」と、ロボットのキャラ「ガンダム」が組み合わさり、意外感があるのでは? 個人的に、「シャアザクライスト」は好きですね。ガンダムで人気の高い「シャア専用ザク」が、ビックリマンが誇るロボットのキャラ「ヘラクライスト」の装備をまとう夢のコラボです。キャラ名のつけ方も工夫しています。違和感を残すといいますか、記憶に残りやすいようにと心掛けました。
イラストのクオリティーが高いのはなぜ?! イラストレーターが大事にする信念
久下 イラストは「悪魔VS天使」シリーズを長年デザインされてきた、イラストレーターさんが描いてくださったんですよね。
本原 はい。2人のイラストレーターが、本や資料を読み込んで、かなり勉強してから描いています。ガンダム以外のコラボの時もそうですが、相手キャラの個性やコンテンツのアイデンティティーは何か――そうした本質をくみ取って描いているそうです。
久下 ありがたいことです。
本原 2人の話で印象に残っていることがあります。――ビックリマン風に描くだけならそんなに難しくない。ここで大事なのは、キャラを生み出した相手の思いも含め、ビックリマン風のイラストに仕上げられるかだ、と。とくに今回、ガンダムをデフォルメした『SDガンダム』という既存のデザインがありますので、それとは一線を画していこうと相当意識していたようです。ビックリマンのイラストは輪郭線の太さが特徴ですが、そのビックリマンらしさとガンダムの魅力が共存しているところも、コラボならではの面白さだと思います。
久下 キャラのイラストに関して、監修側の指摘はほとんど入りませんでした。その理由はきっと、そうした思いを込めて描いてくださっていたからなんですね。よくある話で、アレンジを加えるような場合、細かい間違いはつきものです。シリーズ化されているガンダムには相当数のキャラがいるので、機体の色とか、持っている武器が微妙に違う、なんてことはけっこうあるんですよ。今回、そういうこともありませんでした。
山下 強いて言えば、シールの背景は、話し合いながらブラッシュアップしていきました。地球連邦軍とジオン公国軍で背景を分けたり、キャラごとに背景が変わったりしたら面白いよね、と議論して。
久下 それぞれのキャラがどこで生活していたか、活躍したか、そのイメージは生かしていこうと話しましたよね。たとえば地球連邦軍で、補給部隊の任務に就くマチルダ・アジャンは陸地、彼女が指揮する輸送機の「ミデア」は地表の背景で仕上げてくださいました。ジオン公国軍のほうも、中枢を担うザビ家の皆さんは優雅な背景で、キャラの雰囲気にもよく合っています。
山下 そう言えば、ガンダム公式YouTubeチャンネル「ガンダムチャンネル」では、「機動戦士ガンダムマンチョコ」を取り上げました。40周年を盛り上げるプロモーションの一環として、モデルの十味(とーみ)さんが出演している番組「十味のガンダムはじめちゃいました」で、商品をひたすら開封し、シールを当てる企画をやったんです。反響は大きく、公開して早い段階で1万再生に到達しました。何が当たるかわからない、ドキドキ感がはまったのだと思います。当たったシールをずらっと並べたところは、壮観な眺めでした。メタリックなシールはきれいだな、とあらためて感じました。
本原 シール化する時に、背景まできれいに見えるように、エンボス加工にしたのもポイントなんですよ。さて、そろそろこの座談会を締めくくっていかなければなりませんが、今回の取り組みを振り返ってみて、皆さんいかがでしたか?
山下 あらためて振り返ると、苦労したことはあまりなかったですね。ガンダムとビックリマンがブームになったのは同時期ですし、ファン層が似ていることもあってか、企画段階からずっと皆さんと楽しく考えていくことができました。チャンスがあれば、ぜひまたやりましょう!
久下 制作がとんとん拍子で進み、あっという間の発売でした。ビックリマンとのコラボは、ガンダム40周年に花を添えるものだと思います。この企画だけにとどまらず、ガンダム40周年企画はまだまだ続きます。2020年夏には横浜山下ふ頭で、“実物大の動くガンダム”が公開予定です。「機動戦士ガンダムマンチョコ」とともに、そちらもぜひお楽しみに!
本原 日頃からさまざまな業界の人とのコミュニケーションを大事にしていますが、今回は創通の知り合いを通じたご縁によって実現できたことでした。応援してくれる仲間がたくさんいるからこそ、ビックリマンのコラボはうまくいっているのだと思います。「いつかはコラボを」と温めていた企画がかなって、うれしかったです。パッケージ中央に配した「ガンダム40周年」のロゴが目印ですので、ぜひたくさんの人に手に取っていただきたいですね。
取材・文 鳥居裕介
2019-12-17
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