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蘭に似た、白く可憐な花。これが、カカオの花です。日本では、花が咲いているところも、実がなっているところもめったに見られないカカオ。ふしぎで面白い植物の正体に迫ります。

例えるなら楊貴妃が愛したあのフルーツ? カカオの実の味とは

アオギリ科の植物、カカオのふるさとはブラジル、ベネズエラ、コロンビア、ペルーにまたがるアマゾン川上流やオリノコ川上流の熱帯雨林と考えられています。そこから中南米周辺へと広がり、16世紀にヨーロッパの人々によって東南アジアや西アフリカへと栽培が広がっていきました。主に赤道をはさんで南北20度以内、高温多湿でカカオ栽培に適したこの地帯は「カカオベルト」と呼ばれています。

カカオの木は7~10メートルほどの高さに生長します。幹の太さは直径10~20センチと意外に細く、小指の先ほどの可憐な花を咲かせます。年間を通して数千個の花をつけますが、実になるのは数十個ほど。花が小さく大きな虫からは受粉できないので、カカオ農園には小さな虫たちが生きられる環境が必要です。また、カカオの木は半日陰を好むため、周囲にはバナナなど大きな葉で直射日光を遮る「シェードツリー」が植えられています。

カカオの実。木の幹からニョキっと生えている。

小ぶりのラグビーボールのような果実はカカオポッドと呼ばれ、枝や幹から直接ぶら下がっている様子はなんともふしぎな光景です。品種によって黄色やオレンジ、赤などポッドの色はさまざま。割ると中には白い果肉(カカオパルプ)に包まれたカカオ豆が30~40個入っています(これで一般的な板チョコレートおよそ1枚分!)。フレッシュな果肉は、とても甘いライチのような味がするとか。最近では日本でもジュースにして販売しているお店があるので、興味のある方は試してみては?

カカオの実を割ると、白い綿のようなカカオパルプが現れる。

産地によっても特徴はさまざま。個性豊かなカカオの品種

カカオの代表的な品種には、クリオロ種とフォラステロ種、トリニタリオ種があります。原種に最も近いとされるクリオロ種は希少で、病害虫に弱く栽培が難しいため、生産量は数パーセント。現在では主にベネズエラやメキシコなどごく限られた地域で栽培されています。「クリオロ」とはスペイン語で「その土地生まれの」という意味で、古代メソアメリカで栽培されていた土着の植物であったことから名付けられたと言われています。

一方、「よその(土地の)」を意味するフォラステロ種は、西アフリカや東南アジアなど世界で最も多く栽培されています。苦みや渋み、カカオ感が強い味わいはミルクチョコレートと相性抜群です。また、トリニダード島で生まれたトリニタリオ種は、クリオロ種とフォラステロ種のハイブリッドで、クリオロ種の繊細な風味とフォラステロ種の力強い香りを併せ持ち、病害虫に強い品種です。

カカオの実が描かれたトリニダード・トバゴ共和国の切手。

代表的な品種は上記の3つですが、カカオは人の手で栽培・移植されてきた長い歴史の中で交配を繰り返してきたため、品種を正確に分類することは難しく、今も研究が進められています。また、同じ品種でも産地によって特徴は異なります。ちなみに、ロッテのチョコレートの多くは、骨格を作る「ベースビーンズ」にガーナ産の豆を、香りのアクセントとなる「フレーバービーンズ」に中南米産の豆を少量用いることで、まろやかで豊かな味わいを生み出しています。

チョコレートは発酵食品だった?!

収穫したカカオ豆はパルプごと専用の箱の中で発酵させます。農園によってはバナナの葉で包んで発酵させるところも。微生物の力でカカオ豆の苦みや渋みが低減され、特有の香りのもととなる成分が作られるため、とても重要な工程です。「発酵」と聞くと納豆やチーズ、ワインなどを思い浮かべますが、実はチョコレートも発酵食品の一つなのです。

発酵のためにバナナの皮に包む(左)。発酵中のカカオ豆。撹拌(かくはん)して空気を含ませる(右)

発酵が終わったカカオ豆は十分に乾燥させて水分を除き、麻袋に詰めてチョコレート製造国へ出荷します。気温の高いカカオの産地では、チョコレートを固める役割をするココアバターが溶けてしまうため、食べるチョコレートの製造には適していません。こうしてカカオ豆は、おいしいチョコレートに生まれ変わるべく、カカオベルトの外側にある遠い国々へと旅立っていくのです。

の こだわり

生産地とともにサステナブルな未来を。ロッテ フェアカカオプロジェクト

フランク・オチェレ駐日ガーナ大使(左)から大統領賞の盾を受け取るロッテ取締役の平田広志

ロッテでは、カカオ豆の生産地に寄り添い、現地の経済的・社会的発展に貢献する活動を「フェアカカオプロジェクト」と名付け、主に2つの取り組みを行っています。1つは調達する生産エリアを指定し、高品質のカカオ豆に一定の割増金を上乗せして支払う「地域指定購入」の取り組み。割増金は現地での分別流通の費用や、医療や保健、水の確保、農業技術指導などに使われています。もう1つは、国内外の業界団体やNPOなどと協力して、農家の支援や子どもたちの教育水準の向上をめざす「生産地支援」の取り組みです。こうして生産地の発展に貢献しながら調達したカカオ豆を「フェアカカオ」と位置づけ、今後その割合を2023年度までに全体の20%以上、2028年度までに50%以上とする目標を掲げています。

実際にガーナのカカオ農園を訪れたロッテ中央研究所チョコレート研究課課長の安村智史は、「現地の方々の生活水準を向上し、幸せになっていただくことが、サステナブルなカカオの生産につながっています。そのためにできることは何か、今後も模索していきます」と言います。

2019年12月、ロッテは企業活動を通じてガーナの文化とガーナ産カカオを世界に広く伝えていることが評価され、同国の農業省から大統領賞を受賞しました。フェアカカオの取り組みを通じて、さらに貢献していきます。

(参考文献・ウェブサイト)
● ロッテウェブサイト 工場見学・学ぶ>チョコレートカフェ>カカオのお話
● ロッテ フェアカカオプロジェクト
● 書籍「チョコレートの世界史 近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石」武田尚子著 中公新書
● 書籍「カカオとチョコレートのサイエンス・ロマン 神の食べ物の不思議」佐藤清隆・古谷野哲夫著 幸書房
● 書籍「チョコレート語辞典」Dolcerica 香川理馨子著 千住麻里子監修 誠文堂新光社
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