古代ローマの美食家もキリストも…? 食べるミントの歴史
人類最古のレシピに登場
デザートに添えられたミントの葉、よけていませんか? ミントは料理に彩りを足すだけでなく、臭み消しや風味づけに古くから用いられてきました。ミントが料理に使われていたことを示す最も古い記述は、紀元前1600年ごろ、メソポタミア文明の時代に、楔形文字で粘土板に刻まれたものです。米イェール大学に収蔵されていたこの粘土板は、現存する「最古のレシピ」と言われ、フランスの歴史家、ジャン・ボテロによって解読されました。
およそ40の「最古のレシピ」には、ルッコラやディル、タイム、ローズマリー、コリアンダーなど現代でもおなじみのハーブと並んで、ミントがたびたび登場します。
羊や鶏など肉の煮込み料理に用いられることが多く、たとえばウズラ料理では、下ごしらえとして塩と一緒に肉にすり込んだり、仕上げに散らしたりと、ミントがふんだんに使われています。また、「脾臓(ひぞう)の煮込み」という料理には、「上質のミント」を使用する、とあります。
「最後の晩餐」にもミント?!
時を経て、紀元1世紀の古代ローマで、美食家として知られたアピキウスの名前を冠したレシピ集にも、ミントを使ったさまざまな料理が掲載されています。肉や魚料理のソースに、ドレッシングに、サラダやスープにと、ミントが当時の食卓に欠かせない食材だったことがわかります。
さらに、ミントは聖書にも登場します。旧約聖書に書かれている「苦菜(ビターハーブ)」とは、チコリーやクレソンなどのほか、ミントを指していると考えられています。当時はサラダのようなものとして食べられていたそうです。また、新約聖書にも、税をミント、ディル、クミンで納めていたという記載があり、ミントが重要な作物だったことをうかがわせます。
聖書に載っているということは、「あの人」も食べていたのでしょうか…? 近年、イタリアの考古学者らが、イエス・キリストが12人の弟子たちと囲んだ「最後の晩餐」のメニューに新説を唱えています。レオナルド・ダ・ヴィンチの描いた「最後の晩餐」には、パンとワイン、魚料理が描かれていますが、考古学者らが紀元1世紀ごろのエルサレムの食生活を検証したところ、豆のシチューや子羊の肉、オリーブ、そして「苦菜」を食べていた可能性が高いというのです。あの晩、キリストは、ミントを食べていたのかもしれません。
「ミントの世界」より転載
2019-06-28