世界に名だたる 希少な高級カカオ
南米のベネズエラでは、スペイン植民地時代の1607年から、首都カラカスとその周辺で本国向けにカカオの出荷が始まりました。
ベネズエラを代表するカカオの品種は、メソアメリカ(メキシコおよび中央アメリカ北西部)原産の「クリオロ種」です。苦味の少ないマイルドな味わいとフルーティーな香りが特徴で、古くから上質のカカオとして珍重されてきました。
現在、世界のカカオ生産量の80%を栽培の容易な「フォラステロ種」が占め、クリオロ種は5%未満と言われています。クリオロ種は気象条件の変化や病害虫に弱く、実の数も少ないためです。また、クリオロ種を名乗っていても、「トリニタリオ種」(クリオロ種とフォラステロ種の交配種)と交雑した苗木も少なからずあり、純粋なクリオロ種は全体の1%未満という希少品となっています。
ベネズエラにおけるカカオ生産量は、年間1万5000トン程度と決して多くはありませんが、クリオロ種に関して言えば全世界の約3分の1を占めており、高品質なカカオの産地として国際的に高い評価を受けています。
とくに、カリブ海に面した、ミランダ州東部のバルロベント地域で栽培されるクリオロ種の〝カレネロスペリオール〟は、フルーツやスパイスを思わせる芳醇なアロマとキレのある味が特徴です。また、同じくカリブ海に面した、アラグア州のチュアオ村で採れる〝チュアオ〟は、希少なクリオロ種の中で最も原種に近いものとされ、高級品として知られています。
2015年にベネズエラが発行した切手シートには、カカオを育て収穫し、乾燥させてチョコレートになるまでのプロセスが取り上げられています。カカオの輸出国は、原料のカカオを生産していても、製品としてのチョコレートを生産しない国も多いのですが、ベネズエラには有名な老舗メーカーもあります。カカオの品種や産地に目を向けると、チョコレート選びがもっと楽しくなりそうですね。
季刊広報誌「Shall we Lotte」第37号(2017年秋)より転載
2019-12-10