アンも驚嘆したプリンスエドワード島のアイスクリーム
数年前、ある旅行会社が世界で一番おいしいアイスクリームの店はどこにあるかとアンケートを取ったところ、パリやローマの並みいる名店を制してカナダのプリンスエドワード島に本店がある“カウズ(COWS)”が選ばれて話題になったことがあります。
プリンスエドワード島は、カナダの東海岸、セントローレンス湾に浮かぶ島で、小説『赤毛のアン』の舞台として有名です。物語には、孤児院から引き取られてプリンスエドワード島にやってきたアンが、養家のピクニックで生まれて初めてアイスクリームを味わい、「アイスクリームって、言語を絶したものだわ、マリラ。まったく崇高なものね」と驚きの声を上げる場面があります。『赤毛のアン』が発表された1908年当時、まだ冷凍施設が一般的ではなく、アイスクリームは高級品でしたから、不遇な幼少期を過ごしたアンにとっては高嶺の花だったはず。この言葉はあくまでも比喩的なものだったと思いますが、現在、このカウズがカナダ全土に14店舗(うち7店舗がプリンスエドワード島内にあります)あるということなので、どうやら、今のカナダでは本当に“言語を絶した”アイスクリームが食べられるようです。
アイスクリームの切手で子どもを支援
さて、そんなカナダでは、2019年9月23日、“子どもを助けよう”と題して、半球型のアイスクリームをのせたワッフルコーンと、スティックタイプの2連キャンディーが仲良く手をつないだ切手が発行されました。デザインを制作したのは、チャド・ロバーツ・デザイン社のジョアンナ・トッドさんです。
切手の右下には、カナダのシンボルであるメイプルリーフにPの文字が入ったマークがありますが、このPの文字は“永久の”を意味する“Permanent”の頭文字で、将来的に郵便料金が値上げされても、この切手がずっと国内宛て郵便の基本料金(30グラムまで)の切手として有効であることを示しており、“永久保証切手”と呼ばれています。なお、この切手が発行された2019年9月の時点の料金は90セントでした。
このメイプルリーフのマークの後ろに“+10”の表示がありますが、10セントの寄付金を上乗せして販売するという意味ですので、実際には、アイスクリームの切手は1枚1ドルで販売されたということになります。
カナダ郵政としては、切手の販売によって800万ドル以上の寄附金を集めることを目標とし、集まった寄附金は、社会福祉団体、カナダ・ポスト・コミュニティー基金を通じて、図書館、スポーツクラブ、朝食支援プロジェクト、いじめ対策の啓発活動、児童電話相談などの支援のために使われます。
アイスクリームの切手を買って子どもたちを支援する――子どもの頃、夏の暑い日でアイスクリームの冷たさにニッコリした記憶のある大人たちの、ちょっと粋な社会への恩返しですね。
2020-06-16