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1998年に米国で発行された20世紀シリーズ(1900年代)のシートと、その中の“セントルイス万博”を取り上げた1枚
1998年に米国で発行された20世紀シリーズ(1900年代)の“セントルイス万博”を取り上げた1枚

アメリカ合衆国(以下、米国)は東部13州が英国から独立して誕生した国ですが、その後、西方へ領土を拡大していく過程で、1803年、財政難に陥っていたフランス政府から“ルイジアナ”の広大な地域を買収します。

この“ルイジアナ”は、現在のルイジアナ州の地域のみならず、ミシシッピ川流域の広大な地域を占めており、その地名は、この地に最初に入植したフランス人がフランス国王ルイ14世にちなんで命名したものです。また、フランス領ルイジアナの首府とされたのがヌーベル・オルレアン、すなわち、現在のニューオーリンズ(フランス語の“ヌーベル・オルレアン”を英語風に読むとこうなります)です。

ここから起算して100周年になるのを記念して、1904年、ミズーリ州セントルイスでは、4月30日から12月1日まで万国博覧会が、7月1日から11月23日までセントルイスオリンピックが開催されました。

さて、万博の会場には、地元で乳製品を販売していたバナー・バター製造所も出店しており、アイスクリームを販売していました。オリンピックの開催期間と重なった夏には、同社のアイスクリームは飛ぶように売れたそうですが、ある日、アイスクリームはまだ残っているのに、それを入れるカップが先になくなってしまったことがありました。そこで、店員のアーネスト・ハムウィは、とっさに、ワッフルを巻いて、その上にアイスクリームをのせて提供しました。

今でこそ、コーン上にアイスクリームをのせて食べるのはごく普通のことになっていますが、当時としては、香ばしい焼き菓子としっとりしたアイスクリームの組み合わせは画期的で、これを機に、コーンとアイスクリームの組み合わせは急速に普及しました。

1998年に米国で発行された20世紀シリーズ(1900年代)のシートと、その中の“セントルイス万博”を取り上げた1枚
1998年に米国で発行された20世紀シリーズ(1900年代)のシート

米国では、1998年から、20世紀の歴史的に重要な事件を10年ごとに 振り返る15点の切手を組み合わせたシート、“20世紀シリーズ”を発行しましたが、そのうち1900年代を取り上げた切手の1枚には、セントルイス万博でアイスクリーム・コーンを手にした少年少女が描かれています。同じシートには、自動車のT型フォードやライト兄弟の飛行機なども収められていますから、アイスクリーム・コーンは、それらに匹敵するほど、後世の我々に多大な影響を与えた偉大な“発明”と米国では理解されているわけです。

ちなみに、1912年、オレゴン州ポートランドの発明家、フレデリック・ブラックマンがアイスクリーム・コーンを巻くための機械を発明する以前、初期の時代のアイスクリーム用のコーンは、熱く薄いウエハースを手で巻いて作られていたそうです。熱いさなか、汗だくになりながらコーンを作っていた当時の職人さんたちも、仕事終わりには、冷たいアイスクリームで一日の疲れをいやしていたんでしょうね。

内藤陽介(ないとう・ようすけ)
郵便学者。切手をはじめ郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続ける。著書に『日の本切手 美女かるた』(日本郵趣出版)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)ほか。
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