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シンガポール・アイスカチャン
2009年にシンガポールが発行した「伝統的なスイーツ」の切手のうち、アイス・カチャンを取り上げた1枚

常夏の国シンガポールではさまざまな冷たいスイーツを楽しめますが、なかでも定番は“アイス・カチャン”です。カチャンは、マレー語で“豆”を意味します。直訳すれば“冷豆”、いわば“豆入りかき氷”のことで、色鮮やかで華やかな見た目が魅力です。

現在のシンガポールがマレーシアから分離・独立したのは1965年。当時は日本のかき氷と同様、削った氷に色つきシロップをかけただけの“アイス・ボール”が一般的で、街角の屋台などで盛んに売られていました。その後、アイス・ボールの進化形ともいうべきスイーツとして生まれたようです。

アイス・カチャンは、容器の中に具材を入れてから、その上に削った氷を盛り、トッピングの具材を乗せ、シロップや練乳などをかけて食します。

具材は、ゆで豆やスイートコーン、アタップ・チー(食感がナタデココに似たニッパヤシの果実)、グラス・ゼリー(仙草から作られる苦みのある黒色のゼリー)などが定番です。アロエ・ゼリー、チョコレート、ドリアンなどを用いる店もあります。シロップは、カラフルな緑や赤色のものに加え、パーム・シュガーから作られる茶色のグラメラカと呼ばれるものがあります。いずれも、日本のかき氷シロップに比べると甘さ控えめです。

2009年にシンガポールが発行した「伝統的なスイーツ」の切手に取り上げられたアイス・カチャンは、ゆで豆とスイートコーン、グラス・ゼリーなどを使い、緑・赤・黄色のシロップがかかっています。

切手には額面数字の代わりに“1ST”と入っています。これは、ファースト・クラス(優先配達郵便)の郵便料金相当を意味し、料金が値上げされても、永久にファースト・クラスの郵便に使えます。

アイス・カチャンは、具材が容器の底に入っているため、食べ進めていくとさまざまな味が楽しめます。暑さで氷の溶けるスピードが速いため、かき氷というよりも、溶けた氷水に浸した具材をレンゲですくいながら食べることが多いようです。蒸し暑いシンガポールならではの楽しみ方なのでしょうね。

季刊広報誌「Shall we Lotte」第28号(2015年夏)より転載

内藤陽介(ないとう・ようすけ)
郵便学者。切手をはじめ郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続ける。著書に『日の本切手 美女かるた』(日本郵趣出版)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)ほか。
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