固有種こゆうしゅとは、特定とくていの地域ちいきや国くににしか生息せいそくしていない生いき物もののことです。主おもに大陸たいりくから遠とおく離はなれた島しまや標高ひょうこうの高たかい山頂さんちょうエリアなど、狭せまい範囲はんいに分布ぶんぷする生物種せいぶつしゅが固有種こゆうしゅとされますね。生物せいぶつは全すべての種たねが分布ぶんぷの範囲はんいを限かぎられており、分布ぶんぷの広ひろさに関係かんけいなく、全すべての種たねがそれぞれの分布域ぶんぷいきにおいて固有性こゆうせいを有ゆうするものと考かんがえなくてはなりません。

生物種せいぶつしゅが分布ぶんぷする範囲はんいの環境かんきょうによって、それぞれの生物種せいぶつしゅが淘汰とうたを受うけ、進化しんかします。そうすることで、他ほかの地域ちいきでは見みられない形態けいたいや性質せいしつをもつ固有種こゆうしゅが生うまれるのです。

A1でも示しめした通とおり、全すべての生物種せいぶつしゅに固有性こゆうせいがあり、その意味いみでは全ぜん世界せかいで現在げんざい確認かくにんされている生物種せいぶつしゅ約やく175万まん種しゅが、「全ぜん世界せかいの固有種こゆうしゅ数すう」と同義どうぎとなります。
その中なかで、日本にほん列島れっとうにしか生息せいそくしない「日本にほんの固有種こゆうしゅ」は、動物どうぶつでは、哺乳類ほにゅうるい50種しゅ、鳥類ちょうるい16種しゅ、爬虫類はちゅうるい60種しゅ、両生類りょうせいるい63種しゅ、魚類ぎょるい138種しゅ（亜種あしゅ含ふくむ）とされます。
また、植物しょくぶつでは、約やく7,000種類しゅるいの植物しょくぶつが自生じせいし、そのうち約やく2,900種類しゅるい（約やく40％）が日本にほんだけに分布ぶんぷする固有こゆう植物しょくぶつとされます。

例たとえば、小笠原おがさわらやハワイなど、大陸たいりくから隔絶かくぜつされた海洋かいよう島じまで進化しんかし、そこにしか生息せいそくしていない昆虫類こんちゅうるい。平野へいやから隔絶かくぜつされた標高ひょうこうの高たかい山岳さんがくエリアにしか生息せいそくしていないライチョウのような動物どうぶつや高山こうざん植物しょくぶつ。一ひとつの湖みずうみにしか生息せいそくしてない魚類ぎょるいなどは、生息域せいそくいきが極きわめて狭せまい範囲はんいに限かぎられ、集団しゅうだんの大おおきさや数かずが極きわめて小ちいさい固有性こゆうせいの高たかい生物種せいぶつしゅなので、温暖化おんだんかや土地とち開発かいはつ、外来種がいらいしゅの侵入しんにゅうなどによって簡単かんたんに絶滅ぜつめつしてしまう恐おそれが高たかく、絶滅ぜつめつ危惧種きぐしゅに指定していされているケースが多おおいです。
一方いっぽう、同おなじ固有種こゆうしゅでも、生息域せいそくいきが広ひろく、集団しゅうだん密度みつどや集団しゅうだん数すうが十分じゅうぶんに大おっきければ、絶滅ぜつめつのリスクは低ひくく、必かならずしも全すべての固有種こゆうしゅが絶滅ぜつめつ危惧種きぐしゅというわけではありません。
ただし、今後こんごの環境かんきょう変動へんどうによって、絶滅ぜつめつの恐おそれが低ひくいとされる生物種せいぶつしゅたちも、急速きゅうそくに分布域ぶんぷいきが狭せばまったり、集団しゅうだん数すうが減少げんしょうすることで、絶滅ぜつめつ危惧種きぐしゅに転てんじる恐おそれはあります。

A4で示しめした固有性こゆうせいが非常ひじょうに高たかい生物せいぶつは、おそらく誰だれにとっても珍めずらしい存在そんざいとなるでしょう。
例たとえば小笠原おがさわらにしか生息せいそくしていないカタマイマイ（陸産りくさんカタツムリ）や、沖縄おきなわにしか生息せいそくしていないヤンバルクイナなどは、外国人がいこくじんのみならず、日本人にほんじんにとっても珍めずらしい存在そんざいとなるでしょう。
一方いっぽう、日本にほんに広ひろく生息せいそくするアマガエルやアオダイショウ、カブトムシなどは、比較的ひかくてき多おおくの日本人にほんじんにとっては馴染なじみに生物せいぶつとなりますが、海外かいがいの人ひとたちから見みれば、やはり見みたことのない珍めずらしい生物せいぶつとなります。
どんな固有種こゆうしゅも、その生息域せいそくいき外がいで生活せいかつしている人ひとたちから見みれば、やはり珍めずらしい生物せいぶつということになります。

固有種こゆうしゅを守まもるということは、生物せいぶつ多様性たようせいを守まもることにつながります。
それぞれの地域ちいきでしか生息せいそくしていない固有種こゆうしゅが、地球ちきゅう全体ぜんたいの生物せいぶつのバリエーション＝多様たようさを作つくり出だしており、また固有種こゆうしゅから構成こうせいされる地域ちいき固有こゆうの生態系せいたいけいがそれぞれ独自どくじに生態系せいたいけい機能きのうを発揮はっきしています。
豊富ほうふな酸素さんそを作つくり出だす森林しんりんの生態系せいたいけい、美うつくしい水みずを供給きょうきゅうする湿地しっちの生態系せいたいけい、有機ゆうき・無機むきの栄養素えいようそを海うみへと供給きょうきゅうする砂漠さばくの生態系せいたいけい。
などなど様々さまざまな生態系せいたいけい機能きのうが合あわさることで、この地球ちきゅう上じょうはどこへ行いっても生物せいぶつが生息せいそくできる「生物圏せいぶつけん＝バイオスフェア」と言いわれる空間くうかんをその表面ひょうめんに維持いじすることができているのです。
この生物圏せいぶつけんの中なかで私わたしたち人間にんげんも生いかされており、人間にんげんも動物どうぶつである以上いじょう、水みずも空気くうきも食たべ物ものも必要ひつようで、これら人間にんげんが生命せいめいを維持いじするために必要ひつような要素ようそは全すべて生態系せいたいけい機能きのうから供給きょうきゅうされており、その生態系せいたいけいを構成こうせいしているのが生物せいぶつ多様性たようせいであり、その生物せいぶつ多様性たようせいを支ささえているのが固有種こゆうしゅとなります。
故ゆえに固有種こゆうしゅを守まもっていくことは、地球ちきゅう全体ぜんたいの生物せいぶつ多様性たようせい保全ほぜんし、私わたしたち人間にんげんが生いきていくための環境かんきょうや社会しゃかいを維持いじするために重要じゅうような活動かつどうということになるのです。

人間にんげんは、多様たような文化ぶんかを発展はってんさせることで、豊ゆたかな人間にんげん社会しゃかいを作つくり出だしてきました。この文化ぶんかの多様性たようせいや社会しゃかいの発展はってんに欠かかせなかったのが、人間にんげん自身じしんの多様性たようせい、つまり個性こせい＝パーソナリティでした。
例たとえば、人間にんげんに多様性たようせいがなくて、みんなが同おなじ姿形すがたかたち、同おなじ性格せいかくだったら、どんな社会しゃかいになるでしょう。それはとてつもなく退屈たいくつで、恋愛れんあいすらも面白おもしろくなく、何なにも文化的ぶんかてきな生産せいさんを生うむことのない社会しゃかいとなるでしょう。
色々いろいろな個性こせいが集あつまることで、さまざまなアイデア、センス、技術ぎじゅつが結集けっしゅうし、文化ぶんかは発展はってんを続つづけ、豊ゆたかな社会しゃかいが維持いじされます。
自分じぶんとは違ちがうから、あるいは多おおくの人ひとと違ちがうから、という理由りゆうで相手あいての個性こせいを否定ひていすることは、多様性たようせいを否定ひていし、文化ぶんかの発展はってんを妨さまたげることを意味いみします。
色々いろいろな姿形すがたかたちをした人ひと、色々いろいろな考かんがえ方かたの人ひと、みんなが幸福こうふくに安心あんしんして生いきていける世界せかいを目指めざして、お互たがいの個性こせいを尊重そんちょうできる社会しゃかいを作つくっていくことが大事だいじです。

クワガタナカセというクワガタムシの背中せなかに住すんでいるダニ。
地域ちいきごとに、またクワガタの種たねごとに、固有こゆうの遺伝子いでんしを持もつ系統けいとうに進化しんかしています。
このダニは絶対ぜったいにクワガタムシの背中せなかじゃないと生いきていけません。ヒラタクワガタのダニを別種べっしゅのクワガタにのせても死しんでしまう。とりついているクワガタが死しんでしまった場合ばあい、別べつのクワガタに飛とび移うつれないとダニも死しんでしまう。
だからたくさん増ふえて、生存せいぞん確率かくりつを上あげて種たねを存続そんぞくしているのです。面白おもしろいですよね。
野外やがいで採集さいしゅうしたクワガタには大体だいたいついているので、観察かんさつしてみてください。