香川県の高松から車で30分ほどの
場所にあるこの町は、
カリンの町と呼ばれている。
民家の軒先には、カリンが実をもたげている。
この町の人々の生活には
カリンが深く入り込んでいるそうだ。
「カリンの歴史は、ここから
はじまったと
言われています」
日本で初めてカリンの木が植えられたと言われる場所があると、
町役場の人が説明してくれる。平安時代の初期に、真言宗の開祖として知られる空海が中国から持ち帰ったことに由来しているとのこと。満濃池のそばには、その木を祖先に持つというカリンの木があった。
「一家に一苗、
カリンの木が配られました」
昭和59年にはカリンを町木に認定。昭和63年には、全国植樹祭がまんのう町の満濃池森林公園で開催され、当時皇太子と皇太子妃だった上皇上皇后両陛下が参列された。
その記念に、町木のカリンの木が一家に一苗配られ、町民とカリンの距離がぐっと縮まったという。
「カリンシロップを
置いていない
家庭はないですね」
豊作時は年間5トンのカリンが取れるというこの町。「おかげで今年も元気に過ごせた」と、シロップを煮込みながらご婦人が笑う。
この日、町の公民館では、人々が集まってカリンのシロップとジャムをつくっていた。まんのう町には、カリンシロップを置いてないご家庭はないと言っても過言ではないという。
「カリンの種は美容には
欠かせません」
太陽の下で紫外線にさらされながら働く農家の方々。
しかし、こちらの農家の奥様方はとても美しい肌をしていた。こちらで収穫されたカリンの種を化粧品に加工し、その製品を使用しているからだという。公民館にも、焼酎にカリンの種を浸して自家製の化粧品をつくり、肌の保湿に使っているというご婦人もいた。
「カリンは玄関に
置くといいですよ」
カリンのにおいを嗅ぐと、清涼感のある爽やかな香りがする。実はカリンは消臭効果もあると言われているとのこと。
町の人々は収穫の時期になると、カリンを玄関などに飾り、インテリアとしても楽しんでいるようだ。
「カリンが人々の暮らしに
活かせないか
いつも考えています」
実が硬く渋みのあるカリンは、そのまま食べることは難しいものの、果実や種にはたくさんの可能性が秘められている。
まんのう町では、カリンをもっと楽しんでもらえるように、ジャムの製品化に力を入れている。