ドールフルーツロスをゼロに!〝もったいないバナナ〟プロジェクト
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「ロッテと学ぼうSDGs」3回目は、バナナやパイナップルなどのフルーツでおなじみのドールです。流通などの過程で廃棄されてきたバナナを生かして、「フルーツロスゼロ」を実現したい――。そうした願いから始まったのが「もったいないバナナ」プロジェクトです。発足当時から関わる同社の加工食品本部マーケティング部 シニアマネージャーの成瀬晶子さんに詳しく聞きました。
食べられるのに規格外として廃棄されるバナナを何とかしたい
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—— 2021年9月から「もったいないバナナ」プロジェクトが始まりましたが、いきさつを教えてください。
成瀬晶子さん 当社は2020年にSDGs実現に向けたドールの目標を、「ドールプロミス」として打ち出しました。6つの目標を設定したのですが、その一つにあげたのが「フルーツの埋め立て廃棄を2025年までにゼロにする」でした。
ドールが日本に輸入しているバナナの総量は年間20万~25万tなのですが、年間約1000tの規格外バナナが発生しており、総量の0.4~0.5%に相当します。これはフィリピンを中心とした産地から輸入し、青果卸業者に届けるまでの段階で規格外となるバナナの量です。さらに、産地でも輸出前の段階で規格外のバナナが発生しており、フィリピンの産地では年間約2万tの規格外バナナが発生します。
規格外となる理由は国内も産地もほぼ同様で、皮が傷ついたり、熟しすぎたりしていることがあります。日本は他国と比べて規格が厳しいので、ロスが多くなる傾向があります。
こうした規格外バナナは、以前から動物園やフードバンクに寄付したり、またバイオガス発電の原料として活用してきました。
ただ、ドールがドールプロミスを掲げ、フルーツ埋め立て廃棄の削減に取り組んでいるというメッセージが消費者に伝わりにくかった。その問題を解決することが、「もったいないバナナ」プロジェクトを立ち上げた理由です。
“もったいないバナナ”の収益を産地に還元する
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—— 一般消費者にわかりやすく伝えるために、どんなところを工夫されましたか?
成瀬さん 日本では規格外の商品に対して、「安かろう悪かろう」「B級品」みたいなネガティブなイメージを抱きがちです。そこで規格外バナナを「もったいないバナナ」というポジティブなニュアンスを含んだ言葉に言い換えました。そのうえで、バナナジューススタンドに協力いただいて、もったいないバナナを使ったジュースの提供を始めました。実際に飲んでいただくと、「これまで口にしていたジュースと変わらずおいしい」「少し熟しすぎたバナナのほうが甘い」という感想をいただきました。メディアにも多く取り上げていただいて、消費者の思考が徐々に変わっているな、という手応えがありました。
もともと〝バナナは価格の優等生〟と言われ求めやすい価格ですが、もったいないバナナも無償ではありません。寄付しているバナナ以外は、割安ながらすべて対価をいただいています。価格は抑えていても、輸送や製造のコストは上がっています。このままでは産地は疲弊し、サステナブルな事業はできませんから、もったいないバナナでも相当の対価を産地に還元しています。こうした活動を通じて、産地が置かれた状況にも理解が進めばと良いと考えています。
—— 国内のもったいないバナナはどれぐらい生かされましたか?
成瀬さん 現時点では、国内で発生する弊社名義の規格外バナナの内、ほぼ9割が活用されています。ただ、フィリピンの産地で発生する規格外バナナは約2割程度しか活用されていないので、その活用に現在注力しています。
フィリピンの産地で冷凍スライスやピューレに加工し、日本輸入、加工食品に使うという活用方法を推進しています。
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当社の自社商品として、冷凍デザートの「バナナ ドールディッパーズ」と「果物の恵みゼリー バナナ&キウイフルーツミックス」があります。前者はもったいないバナナの冷凍スライスにチョコレートをコーティングしています。今年4月に発売しましたが、砂糖を使っていないのに甘いと好評です。後者はもったいないバナナのピューレを使ったパウチタイプのゼリーです。
それ以外にも、ロッテさんが手がけてくださったアイス「Doleスマイルバナナアイス」などにも、もったいないバナナを使っていただいています。商品パッケージには〝Mottainai Banana〟と印刷した黄色のロゴマークをつけています。
それらの商品はスーパーマーケットやコンビニエンスストアなど、多くの消費者の目に触れやすい店舗で展開しておりますので、これまで以上に“もったいないバナナ”の認知が広がるのではないかと期待しています。
果実の葉や茎が有名ブランドのシューズや服に
—— プロジェクトに対する社内外の反応はいかがですか?
成瀬さん 社外からは、もったいないバナナについて毎月多くの問い合わせをいただいています。企業からは、例えばもったいないバナナを使用した商品開発で食品ロスに貢献したいとか、社員食堂で使いたいという問い合わせもあります。学校からも連絡がありまして、例えば高校で生徒が催すイベントにもったいないバナナを使いたいという問い合わせがありました。SDGsへの関心の高まりを感じます。
弊社内でも、企業の利益追求だけでなくサステナブルな社会づくりに関われていることがモチベーションになっています。プロジェクトの立ち上げから携わっている私も同じ思いです。
—— これからどんな展開をしていきますか?
成瀬さん 今後も産地で出るロスをもっと活用していきたいと考えています。バナナだけでなく、他のフルーツロスを減らすプロジェクトを始めています。例えばアボカド。今年4月には、DEAN & DELUCAさんで、人気朝食メニューの「アボカドトースト」に「もったいないアボカド」を使って頂きました。こうした方法で、他の果物を使った商品の開発も含めて活用事例を増やしていきたいと考えています。
もう一つは、果実の葉や茎を活用する試みも進めています。葉や茎を畑に放置して腐敗した場合、たくさんのCO₂(二酸化炭素)が排出されます。そこで始めたのがパイナップルの葉を使って繊維を生産し、それを使ってシューズや服をつくるプロジェクトです。トウモロコシ由来の繊維も少し混ぜて作るのですが、そのノウハウを持っているロンドンに拠点のあるアナナス・アナム社という会社と協業しています。有名ブランドに使われていて、私も繊維と製品を見ましたが、〝ヴィーガン・レザー〟といわれ、しっかりした素材になっていました。これからバナナの茎などの活用も研究対象になるでしょう。その先に「フルーツ埋め立て廃棄ゼロ」が見えてくると思います。
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取材・文 西所正道
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2022-11-01
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