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2018年用の年賀はがきに貼る海外グリーティング(差額用)のうち、三色の団子を取り上げた1枚。シートの余白にお茶のイラストが入っているのが心憎い。たい焼きの切手と2種セットで発行された。

海外宛の郵便料金の切手に自国の文化を取り上げて、世界にアピールしようという試みは古くから各国で行われてきましたが、わが国で、2014~18年、翌年の年賀はがきを外国宛に差し出す場合の差額用として発行された切手“海外グリーティング(差額用)”は、日本の食文化などを取り上げたイラストがかわいらしく、人気があります。

このうち、2017年11月1日、翌2018年用の年賀はがきに貼ることを想定して発行された18円切手(海外宛航空便はがき料金70円と当時の国内用はがき料金52円の差額に相当)の1枚には三色団子が取り上げられています。

穀物の粉を水や湯を加えて丸め、蒸したりゆでたりして作る団子は、わが国では古くから愛されている食べ物で、平安時代の書物『新猿楽記』にも記録が残されており、鎌倉時代から室町時代にかけての『拾芥抄(しゅうがいしょう)』、『沙石集(しゃせきしゅう)』、『庭訓往来(ていきんおうらい)』にも“団子”の語が見られます。ただし、この時代は“団子”と書いて“だんす”と読むのが一般的で、団子はひとつずつ独立した状態で並べられていました。また、当初は甘味ではなく、主食の代用品として利用されていました。

室町時代も中盤以降になると、現在のように“だんご”の読み方が定着するとともに、竹の串に刺したものが作られるようになります。

なぜ団子は三色なのか?

切手に取り上げられた三色団子が作られるようになったのは江戸時代に入り、庶民の間にお花見文化が定着してからのことです。

団子の色は、串の先の方から順番に、食紅で染めた桜色と着色しない白、よもぎを練り込んだ緑色となっています。その由来は、一説によると、桜色は春、白は雪の降る冬、緑は葉が生い茂る夏をイメージしているのだとか。そして、この説では、秋がないのは「飽きない」のシャレだと説明されています。

ちなみに、江戸時代までは、団子はひとつ1文、一串に5つ刺して1本5文で売られるのが一般的でしたが、江戸時代には4文銭が広く流通するようになったため、関東では一串に4つの団子を刺して売る店が増加しました。

江戸時代の通貨は、金貨と、秤量貨幣(しょうりょうかへい<貴金属としての品位・量目を検査・計測して用いる貨幣>)の銀、それに銭(銅銭)の3種類があり、金貨との交換レートは、公定相場では、金1両(小判1枚)=銀60匁(もんめ<約224.4g>)=銭4000文となっていました。4文銭という、一見、計算には不便に見える貨幣が流通していたのはこういう事情によるものでした。団子も食紅やよもぎを練り込んで付加価値をつけたので、プレーンな団子なら1串4つ、または5つのところ、同じ値段でも一串3つという値付けになったのかもしれません。

一方で三色団子は純粋に春のお菓子だったという説もあります。

その場合、三色の組み合わせについては、①桜色と白酒の白、よもぎの緑を表している、②桜の花がつぼみ(ピンク色)から満開(白)になり、花が散って葉桜(緑)になる変化を表現している、③春の太陽と名残の雪、雪の下に芽吹く新芽に見立てている、などと説明されているようです。

いずれも季節感を大事にしていた昔の人たちの心遣いがうかがえる説明ですが、「花より団子」の僕としては、おいしければすべてが正解と言いたいですね。

内藤陽介(ないとう・ようすけ)
郵便学者。切手をはじめ郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続ける。著書に『日の本切手 美女かるた』(日本郵趣出版)、『みんな大好き陰謀論』(ビジネス社)、『日本人に忘れられたガダルカナル島の近現代史』(扶桑社)など多数。
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