「噛むこと」で快適なCar Lifeを!
毎日の生活の中で、なにげなく繰り返している「ガムを噛む」という行為には自動車乗車中の乗り物酔いやねむ気防止に効果があることを知っていますか?普段車に乗り慣れていない人が乗車した時に酔ってしまったり、疲れが溜まっていて運転中にいつの間にか、眠くなってしまったことがある人は少なくないと思います。
ここでは、ふだんあまり意識していない「噛むこと」と自動車の関係についてわかりやすく説明していきます。「噛むこと」で快適なCar Lifeを送りましょう。
※ここでは、乗り物酔いや運転中のねむ気に関する実験やその結果を紹介します。ガムを噛んだ際の効果には個人差や日による違いがあります。乗り物酔いやねむ気を防ぐために 、まずは体調を十分に整えて万全の状態で運転・乗車することをおすすめします。
01:ガムを「噛むこと」で「乗り物酔い軽減」 ※1
「乗り物酔い」とは
車に乗ることに不慣れな方々に起こりやすく、蛇行した山道を車で走行している途中など、予測のつきにくい「揺れ」が多いときに生じやすい症状です。内耳の前庭器官および三半規管で感受される加速度が変化することから起こる、自律神経系を中心とした一時的な病的症状で、専門的には動揺病(motion sickness)と呼ばれています。めまい、頭痛、冷や汗に加え、重度になると吐き気など不快な症状を伴うので、楽しい旅行中には避けたいものです。
ここでは、ガム咀嚼の乗り物酔い低減効果について、振動再生装置を用いて検証した事例をご紹介します。
【実験内容】
- 被験者は20~25歳の男性30名です。
- 6軸振動再生装置を用いて、振動台上に固定された椅子に着座した被験者を、①ガム咀嚼なし、②ガム咀嚼ありの2条件で、40分間連続的に加振しました。乗り物酔いには「慣れ」が影響するため、結果がその影響を受けにくいように実験を構成しました。
- “ガム咀嚼あり”(②)の条件では、加振開始時より被験者に板ガム(メントール味の市販品)を渡し、被験者の要求に応じてガムを追加で渡し、加振終了までガムを噛み続けてもらいました。
- 乗り物酔いの度合いの評価のため、加振中の被験者にスライドボリウムを操作し、乗り物酔いの度合を評価してもらいました。
スライドボリウムには、その左端から右端に向けて0から4の目盛が付けられています。
被験者には、目盛0が加振前と変わらない状態、目盛4が“嘔吐寸前”の状態に対応していることを事前に説明しました。
【実験結果】
加振終了時のスライドボリウム目盛の平均値を計算した結果、ガムを噛まなかった場合(①)は、目盛がおよそ2だったのに対し、ガムを噛んだ場合(②)では1.2程度に抑えられました。
*実験結果より、
ガムを噛むことには、自覚的な乗り物酔いを軽減する効果があることが認められました。
【ご注意いただきたい点】
「乗り物酔い」は、内耳で感受される体内情報と、目から入る視覚情報のミスマッチ(感覚不統合)が有ると起こりやすいと言われています。乗車中に不意な乗り物酔いに襲われた際は、視覚情報の影響を少なくするために、遠くの静止した景色を眺めると良いでしょう。
睡眠不足や空腹・過食など、体調不良も「乗り物酔い」の引き金になります。運転前、乗車前には、体調管理にも十分に心がけてください。
ガムを「噛むこと」が、「乗り物酔い軽減」の手助けとなり、皆様の快適なCar Lifeのお役にたてることを願っています。
※1
ガム咀嚼が被加振時の生理指標に与える影響
鈴木 郁, 後藤 剛史, 滝口 俊男, 徳本 匠
人間工学 38(3), 162-167 (2002)
02:ガムを「噛むこと」で「ねむ気防止」 ※2
自動車の居眠り運転事故は、概日リズム(Circadian rhythm)によって生理機能が低下する、深夜や早朝の時刻帯に多発することが知られています。夜間から明け方の高速道路での運転は、長距離で長時間運転になるケースが多いうえ、感覚刺激が少なく、高速道路催眠現象(Highway hypnods)によって「ねむ気」が増加していきます。
安全運転のため、「ねむ気」対策として、定期的に停車して、十分な休養を取りながら走行することが大切です。加えて、一般的に、「ねむ気」を抑えるにはガムを噛むことが良いと言われています。
ここでは、ガム咀嚼の「ねむ気防止」について、高速道路の夜間運転中に検証した事例をご紹介します。
【実験内容】
- 被験者は高速道路の運転に熟練した20~30歳代の男性2名です。
- 午後11時に東京近郊の市街地を出発して、午前0時~3時の3時間、東京IC~静岡IC間の162km、高速道路を運転してもらいました。
- 途中、高速の乗り口、サービスエリア2カ所の計3か所で停車して、その都度ガム(カフェインなどを含まない市販品)を5分間噛んでもらいました。
- 対照実験では、停車時にガムを噛みませんでした。同一の被験者でガム咀嚼の有無の計2回、1週間の間隔をあけて運転してもらいました。
- ガム咀嚼の有無でねむ気の違いを比較するため、運転中の瞬き回数を測定しました。
※瞬きの回数はねむ気が強いと増えることが知られています。
【実験結果】
ガムを噛んだ場合、瞬き回数の増加は軽微でしたが、ガムを噛まなかった場合、運転開始前半から著しい増加が認められ、 3時間後には運転開始時の約2倍の瞬き回数となりました。
*実験結果より、ガムを噛むことで、瞬きの回数の増加が抑制されることが認められました。
【ご注意いただきたい点】
ねむ気防止は、運転前に睡眠を充分とったうえで、運転中に適切な休憩をとることが基本です。これらの条件や体調を整えたうえでも、不意に”ねむ気”に襲われてしまった場合に、ガム・チューイングを活用することが望ましいと考えられます。
心身状態が良好な状態で運転するようにしましょう。あくまでもガムを噛むことは補助的なものです。
※2
自動車運転中の”ねむ気”防止に関する実験的研究
遠藤敏夫, 手塚七五郎, 佐藤吉永
交通医学 36(3), 195-204 (1982)
「噛むこと」が、乗り物酔いや運転中のねむ気対策の一助となり、
皆さまのよりよい快適なCar Lifeに、つながりますように。