〜三越伊勢丹グループ社員約10万人を笑顔にするプロジェクトの成果発表〜
ストレス社会といわれる現代、働く人へのメンタルヘルス対策が急務とされています。2017年6月2日(金)に開催された「第17回日本抗加齢医学会総会」では、鶴見大学歯学部 斎藤一郎教授が構築した「笑顔トレーニング」の成果や「笑顔や噛むことにはストレス低減効果がある」という最新知見が発表されました。発表会の後半には、笑顔トレーニングのデモンストレーションも行われました。
<前半>
目次
笑顔の効能と研究の成果発表
斎藤一郎氏(鶴見大学歯学部 教授/日本抗加齢医学会 副理事長)
仕事も人生もうまくいく「笑顔の法則」とは
毎日を楽しく健康的に過ごすためには、ストレスを溜めない生活をすることが大切です。それには、ストレスを効率よく発散することが重要でしょう。口腔顎顔面領域を専門とする医療者としてなにかできないものか。そんな思いからたどりついたテーマが「笑顔」でした。
事実、笑顔の効果は、国内外で次々と立証されています。
例えば、笑顔でいると「DHEA(デビドロエピアンドロステロン)」というホルモンが増えることがわかっています。DHEAは、「長寿のホルモン」といわれ、分泌量が多い人ほど長生きであるという研究結果が発表されているのです。
「唾液」とストレスとの関係
もう1つ注目したいのが「唾液」です。
唾液の分泌量が多い人は、DHEAの分泌レベルも高いというデータがあります。唾液腺は自律神経に支配されており、ストレスを感じると唾液は止まります。口の渇きに気づいたら、ストレスがあると自覚して早めに対処することをお勧めします。
三越伊勢丹グループのとりくみ「笑顔トレーニング」
三越伊勢丹グループでは、従業員自らが幸せになることで、お客様の笑顔と幸せを生み出していくことを目的に、2015年に「笑顔プロジェクト“笑う門には福来たる研究所”」を設立。全社的な取り組みとして、「笑顔トレーニング」を実施しています。
また、こうした「笑顔トレーニング」で社員の意識はどう変わったかを調査。さらに、笑顔トレーニングの効果をより高めるため、ロッテとの共同研究で、笑顔トレーニングとチューインガム咀嚼を併用し、その効果を調べました。
噛む行為には、顔全体の表情筋を鍛える、口角がリフトアップされる、目元のむくみをとる、唾液量を増やすなどの効果が期待でき、魅力的な笑顔づくりにも役立ちます。
01笑顔トレーニングによる意識の変化
従業員5千人を、①チームリーダーが笑顔トレーニングを積極的に実施した、②トレーニング実施した、③トレーニング実施しない、という3つのグループに分けて、21ヵ月間にわたって、従業員の意識がどう変わったかを調査。
02チューインガムを併用したトレーニングの結果
*1:HAD尺度とは、Hospital Anxiety and Depression Scaleの略称。精神状態(抑うつ・不安)を測定するアンケート方法のことです。
*2:「職業性ストレス簡易調査票」とは、平成27年12月より厚生労働省により施行された「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度」に基づくアンケート調査法のこと。仕事のストレス要因、心身のストレス反応、周囲のサポートを測定します。
結果は、笑顔トレーニングによって仕事の充実感が増し、精神的健康状態の向上やうつ傾向の優位な改善がみられました。
三越伊勢丹グループでは、今後さらにグループ全体での取り組みを推進していくとのことです。また、この研究データを用いた医学論文を作成し、今後は世界に向けて周知活動を行っていく予定です。
【研究概要】
■対象:三越伊勢丹グループ従業員 計346名
■期間:2015年9月7日~10月18日
■内訳:チューインガム咀嚼群169名(男性78名、女性91名、平均年齢38.4歳)、対照群177名(男性80名、女性97名、平均年齢40.1歳)
■内容:チューインガム咀嚼群は、『1回2粒を10分間、1日4回、6週間』継続したチューインガム咀嚼を実践、トレーニングには、キシリトール配合ガムを用いた。
<後半>
実践! 笑顔トレーニング
発表会の後半では、インストラクターによる「笑顔トレーニング」のデモンストレーションが披露され、出席者も一緒に行ってトレーニングの効果を確かめました。
「笑顔トレーニング」は、顔の肉が垂れ下がることを防ぐ、唾液の分泌を良くする、若々しさ・美しさ・健康の維持向上などに役立ちます。
(1)ホッピング
期待される効果:舌の筋力アップ
10回×2セット。これを朝・夕行います。
〈やりかた〉
姿勢を正します。舌全体を上あごにつけて、しっかり吸い上げてから、「タンッ」と音を出しながら舌をはじきます。
(2)リップトレーニング
期待される効果:頬の位置や目元のアップ
朝・夕に10回ずつ行います。
〈やりかた〉
左右の奥歯を軽く噛み、「イー」と発音しながら口角を引き上げます。次に「ウー」と発音しながら口をすぼめます。ゆっくりと「イー、ウー、イー、ウー」と繰り返します。「イー、ウー」で1セット。慣れてきたら回数を増やします。
(3)リップパッファー
期待される効果:口の回りの筋力アップ
朝・夕に10回ずつ行います。
〈やりかた〉
まず、上唇と歯の間に空気をいれます。次に下唇と歯の間、左の頬、右の頬の順番で口の中の空気を移動させていきます。上、下、左、右で1セットを10回行います。唾液の分泌がよくなり、笑顔が作りやすくなるだけでなく滑舌もよくなります。
ストレスの軽減にもつながる「笑顔トレーニング」。心身ともに健康で笑顔でいられるように、毎日続けてセルフケアできたらいいですね。