監修:石野 由美子(いしの・ゆみこ)
歯科衛生士・健康咀嚼指導士 二子玉川ガーデン矯正歯科 昭和大学歯科病院 口腔リハビリテーション科
食事の際、誰もが無意識に行っている「噛んで飲み込む」という動作。実は、歯で噛んでいるだけではなく、唇や口輪筋、舌、頬、顎などの筋肉を総合的に使いながら一連の動作として食事をしています。オーラルフレイルの予防のためには、歯の健康はもちろん、口の周りの筋力を維持していくことも重要です。まずは、私たちがどのように食事をしているのか、どんな筋肉を使っているのか、「食べるしくみ」を知りましょう。
石野先生のポイント解説!
顔には30種類以上の「表情筋」と2種類の「骨格筋」があります。主な違いは、「表情筋」は皮膚から皮膚につながる筋肉、「骨格筋」は骨と骨をつなげる筋肉ということです。骨格筋の一つである「咬筋(こうきん)」を使ってしっかり噛むときに、口の周りにある口輪筋、舌筋、頬筋などの「表情筋」が刺激されます。ただ漫然と噛むだけでは、正しく噛んでいるとは言えず、筋力アップにつながりません。重要なのは、筋肉の動きを意識すること。すると自然と口を大きく、力強く動かすことができます。よって、正しく噛む習慣をつけて、口周りの筋肉(唇、頬、舌)の筋肉を鍛えることが大切になるのです。
『鍛える』というとすごく大変なことのように思われがちですが、普段あまり動かさない筋肉も含め、食事や会話で使う口周りの筋肉をほぐすぐらいの気持ちで、次に紹介する『お口のエクササイズ』を気軽に試してみてくださいね。
■お口のエクササイズ
お口の健康維持に大切なのは、口周り(唇、頬、舌)の筋肉を鍛えること、柔軟に動きやすくすること。最初は動かしにくいかもしれません。でもそれは筋肉が硬くなってしまっているからです。「お口のエクササイズ」では、噛むときに使う咬筋、唇、舌、頬の筋肉、飲み込むときに使う筋肉をバランスよく同時に鍛えることができます。このエクササイズは、オーラルフレイルの予防に加え、筋肉を鍛えることによる「たるみ」の解消などアンチエイジングにもつながります。また、このエクササイズで正しく噛むことが習慣づけば、食事のたびに口周りの筋肉を正しく使うことになり、「食べること」=「エクササイズ」にもなるのです。
【効果的にエクササイズをするための3つのポイント】
①正しいフォームを理解する ②唇、舌、頬の動きを意識して動かす ③しっかりと噛む
上記3つを意識して日々エクササイズすることで、正しい噛み方、飲み込み方を習慣づけましょう! 歯磨きあとのうがいの時などにこのエクササイズを取り入れると、習慣化しやすいです。
石野先生のプラス1 アドバイス!
基本フォームをしっかりと意識して、姿勢を整えることを心がけましょう。はじめたばかりは毎回注意が必要ですが、続けることで筋肉に柔軟性がつくと、自然とできるようになりますよ。
石野先生のプラス1 アドバイス!
頬の筋肉(頬骨筋)がうまく上がらないときは、はじめは指を使って支えてもOK。人差し指で、頬全体を持ち上げるようにスムーズにできます。
石野先生のポイント解説!
舌は、普段口の中に納まっているものですよね。でも舌は口の中でたくさん動かしている筋肉なのです。食べ物を舌の先で左右の奥歯に送ったり、飲み込みやすいようにうしろに送ったり、飲み込むときは舌の奥を持ち上げて飲み込む。実は舌は口の中全体さらには喉の奥でも動いています。舌先だけではなく、喉に近い舌の奥から大きく動かすつもりで取り組むとより効果的です。
お口のエクササイズは、「口を閉じる」「舌を動かす」「噛む」「飲み込む」など食事の際に必要な筋力を総合的に鍛えるものです。最初から全部うまくできなくても大丈夫。徐々に難しくなる構成になっているので、できるところまでを続けながら少しずつはじめてみましょう!
石野 由美子(いしの・ゆみこ)
二子玉川ガーデン矯正歯科
昭和大学歯科病院 口腔リハビリテーション科
歯科衛生士
健康咀嚼指導士
(2023年7月現在)
歯科衛生士。日本咀嚼学会認定健康咀嚼指導士。日本成人矯正歯科学会認定矯正歯科衛生士。日本口腔リハビリテーション学会認定歯科衛生士。フェイスニング公認講師。日本口腔筋機能療法(MFT)学会役員。二子玉川ガーデン矯正歯科勤務。昭和大学歯科病院口腔リハビリテーション科に非常勤勤務し、口腔機能障害に対する口腔リハビリテーションを専門に行い、研究にも着手。
著書に『愛され笑顔をつくる口元エクササイズ「若返り!モデルスマイル塾」』(小学館)、共著に「摂食機能療法マニュアル」(舌の運動訓練、口唇頬運動訓練)(医歯薬出版)、口腔筋機能療法(MFT)関連書籍多数(わかば出版、医歯薬出版他)。