産地が抱える
課題への支援

世界の主要なカカオ豆生産地であるガーナでは、農家の貧困や児童労働、森林減少など、カカオ産業における構造的な課題が存在しています。さらに、近年カカオ豆の収穫量が減少しており、農家の収入向上につながるより充実した支援が求められています。
私たちは、生産者と生産地域の課題と向き合い、カカオ生産の持続可能性を高めるさまざまな取り組みを行っています。

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産地が抱える
課題への支援

農法トレーニングの実施

肥料や農薬の適切な使用方法、剪定のコツ、雑草刈りの重要性など、カカオ豆の生産性向上に寄与するトレーニングを実施しています。トレーニングで学んだ農法を実践した結果や感想などのフィードバックを農家から受けることで、より効果的で実践的なトレーニングの提供につなげています。

苗木の配布と育苗センターの建設

カカオ豆の生産性向上を目指し、苗木の配布を行っています。近年、カカオ豆の収穫量が減少している原因として、天候不順の他、病害虫の蔓延やカカオの木の高樹齢化などが挙げられています。これらの課題に対応するためには、カカオの木の植え替えが必要であり、そのために不可欠な苗木の提供を行っています。さらに、病害虫に強く、より高品質で収穫量の多いカカオの苗木を育成するため、育苗センターの建設も進めています。2024年には、カカオの苗木約12.5万本*を寄贈しました。

*贈呈される苗木約2.5万本と、育苗センターで25年6月頃を目途に育成される苗木約10万本との合計

関連リリース
https://lotte-hd.com/wp-content/uploads/2025/02/ガーナ共和国苗木寄贈.pdf

バイオ炭による再生農業の評価試験

カカオ農園で発生する未利用の副産物であるカカオポッドをバイオ炭として有効活用するべく、評価試験を進めています。バイオ炭は、土壌の透水性、保水性、通気性を改善し、生物多様性の再生や肥沃化を促進します。これにより、化学肥料や農薬の使用量削減、生産性向上が期待されます。また、アルカリ性のバイオ炭を散布することで、アフリカの酸性土壌をカカオの生育に適した中性に近づける効果も期待されます。さらに、難分解性の炭素を含むバイオ炭により長期間炭素が土壌に固定されることで、脱炭素効果も期待されます。

関連リリース
https://www.lotte.co.jp/info/pdf/20240826140230.pdf

VSLA(村貯蓄貸付組織)立ち上げと運営サポート

カカオ豆調達地域でのVSLAの立ち上げとその後の運営サポートに取り組んでいます。この取り組みにより、ファイナンスサービスが利用しにくい農家コミュニティ*で、小規模な貯蓄や低金利の貸付が可能となります。これにより、農家の経済的自立を支援し、コミュニティ全体の持続可能な発展を目指しています。

*コミュニティ:20〜50のカカオ農家で形成される地域コミュニティ

VSLA運営サポート数(ガーナ)

地区 VSLA運営サポート数
Ashanti New Edubiase
/Nsokote
3
Central Dunkwa 14
Twifo Praso 75
Western Manso Amenfi 0

対象収穫年度:2023/24

担当者の想い

資材部
松本祐汰さん

農家の方々やその地域が抱える真のニーズに応えたい

ロッテでは、50年以上前からガーナのカカオ農家を訪問しており、現地への支援活動は今年で17年目を迎えます。初めは民間の公認仕入れ企業(LBCs*)を通じた金銭的な支援が中心でしたが、それだけでは各農家が抱える課題や求めている支援に十分に応えられているのか、私たち自身で確認することが難しいと感じるようになりました。私たちは、農家の方々やその地域が抱える真のニーズに応えたいという強い想いから、現在は日本でのデータ分析と詳細な実地調査に取り組みながら、ロッテ独自のサポートプログラムの充実を図っています。
例えば、生産性向上に向けた農法トレーニングの取り組みひとつを取っても、農家によってニーズはさまざまです。病害虫の被害に悩んでいる農家、雑草刈りや剪定が不十分な農家、知らず知らずのうちに土壌の劣化を招いてしまっている農家など、各農家の問題に合わせた支援が求められています。現地パートナーに協力してもらい、各農家が抱える課題を明確にし、本当に必要とされている農法指導などの取り組みを実施しています。さらに、現地の生の声をフィードバックしてもらうことを大切にしています。農家の方々が私たちの取り組みにどのように感じたか、実際に効果を実感したことなどを共有してもらっています。これにより、ありがた迷惑ではなく、確実にカカオ農家の持続可能な成長につながる支援をしていきたいと考えています。
近年は、カカオの不作という課題に直面しています。その原因は天候不順や病害虫の蔓延などさまざまな要因が複合的に関係していると言われており、私たちが一朝一夕で解決できる問題ではないかもしれません。しかしながら、日頃から継続的にさまざまな支援活動を行い、カカオ農家のレジリエンスを高めることは、こうした不作などの問題が発生した際の適切な対処や改善につながると考えています。実際に現地のパートナーからは、農法トレーニングで農園の管理方法や農薬の使用方法についてアドバイスを行った農家では、収穫量が想定していたより落ち込まなかったというコメントもいただきました。
引き続き不安定な天候が予想されるなど、難しい状況は続きますが、チョコレートメーカーとして商品を安定的にお届けする責任と、カカオ農家の持続可能な未来を支える使命を共に果たすため、足踏みしている暇はありません。より実効的な取り組みを進めるため、不作の原因分析と対応策の提案や、農家の収入向上のための取り組みなど、現地の深い理解や信頼関係が必要となる活動まで幅を広げていきたいと考えています。構造的な課題の解決には時間がかかることを覚悟していますが、カカオ農家とその地域が抱えるさまざまな問題に寄り添い、分析と対話をこの先何年、何十年と継続することで、持続可能なカカオ生産の実現に貢献していきたいと感じています。

*LBCs:licensed buying companies